EVは、“買わせて”普及する乗り物ではないかもしれない。
今回、トヨタ自動車が
中国でロボタクシーの量産を始めたというニュースを見て、
その確信は決定的になった。
なぜなら――
日本はすでに一度、同じことをやっているからだ。
日本のタクシーは「ガソリン車」ではない
ここで、意外と日本人自身が忘れている事実を確認したい。
日本のタクシーの多くは、ガソリン車ではない。
LPG(液化石油ガス)車だ。
これは偶然でも、環境意識の高さでもない。
- 燃料が安定している
- 補給インフラを事業者が管理できる
- エンジン寿命が長い
- 毎日長時間走る用途に最適
つまり日本はずっと前から、
「タクシーは、個人車と同じ燃料である必要はない」
という現実解を選んでいる。
タクシーは常に「新しい動力の実験場」だった
ここが重要だ。
日本では、
ガソリン車が“標準”だった時代ですら、
タクシーだけはLPGという別ルールで運用されてきた。
なぜか?
答えは単純だ。
タクシーは“売る車”ではなく、“走らせ続ける車”だから。
・安いか
・安定しているか
・管理しやすいか
それだけが基準だった。
EVタクシーは「新しい話」ではない
だから私は、
EVタクシーやロボタクシーを見ても驚かない。
日本はすでに「タクシーだけ別燃料」という思想を
半世紀以上前から実践してきた国だからだ。
- 昔:
マイカー=ガソリン
タクシー=LPG - 今:
マイカー=ガソリン/EV混在
タクシー=EV/ロボタクシー
構造はまったく同じだ。
私がベトナムで見ているVinfastも、同じ文脈にある
私は2026年1月、Newsweek日本版WorldVoiceで、
ベトナムで急速に増えるVinfastのEVについてこう書いた。
結論から言えば、Vinfastが街に多い理由は人気でも、性能評価でもない。
EVが「欲しい」からではない。
EVで「働ける」仕組みが作られているからだ。
つまり「仕事を始めやすい」からである。
ベトナムのEVでVinfastが勝っている「本当の理由」 Newsweek日本版WorldVoiceから引用
ベトナムのVinfastは、
- タクシー
- 配車アプリ
- 配送
- 業務車両
という都市の稼働部分に集中している。
これは、日本のLPGタクシーと思想的に完全に同じだ。
トヨタは「EVが売れない理由」を正確に理解している
トヨタ自動車が
中国でロボタクシー専用車を量産したことも、
この文脈で見ると極めて分かりやすい。
トヨタは分かっている。
- EVは個人所有では制約が多い
- だがタクシー用途なら欠点がほぼ消える
- 充電・管理・運行は事業者側で完結できる
これはLPGタクシーの成功体験を持つ日本企業ならではの判断だ。
「EVが人気だからタクシーに使われる」のではない
「中国やベトナムではEVが人気だからタクシーもEVなんでしょう?」
ここで、また一つ誤解を正したい。
違う。
日本のタクシーがLPGなのは、LPGが“人気”だったからではない。
ただ、
- 合理的だった
- 安定していた
- 運行に向いていた
それだけだ。
EVもまったく同じ道を辿っている。
結論:EVは、日本が昔やったことをなぞっている
私はこう結論づけたい。
EVタクシーは未来の話ではない。
日本がLPGタクシーでやってきたことの、動力が変わっただけだ。
- 個人に売る前に
- 生活インフラに組み込み
- 毎日走らせ
- 気づけば当たり前になる
私がベトナムで見てきたVinFast、
トヨタが中国で始めたロボタクシー、
そして日本のLPGタクシー。
すべてが、同じ答えを指している。
EVは売るな。
先に走らせろ。
それが、EVモビリティが本当に社会に根付く、唯一の方法だ。
私がベトナムで見ているVinfast
ベトナムの街に溢れるVinfastの多くは、
誰かの“所有欲”を満たすために走っているわけではない。
配車アプリ、タクシー、配送、業務利用──
つまり働くために、稼ぐために、走り続けているEVだ。
だからベトナムでは、「EVは高いか?」「航続距離は十分か?」といった
日本で繰り返される議論が、ほとんど意味を持たない。
重要なのはただ一つ、今日も走れて、今日も金を生むかどうかだけだ。
EVは思想で普及するのではない。
稼働に組み込まれた瞬間に、普及は終わっているのだ。
Vinfastは“売れた”のではない。
都市の運行に配置されたのである。
