路地裏入口のネオンが導く一杯
ハイフォンの名物である蟹だし麺「バインダークア」。今回訪れたのは、Ngõ 195 Cầu Đất にある地元で長く愛される人気店だ。大通りから路地への入り口に眩しいネオンサイン「CUA BỂ」が光り、そこから店の熱気がすでに漂っている。この瞬間、“ここは間違いなく当たりだ”と直感した。
路地がそのまま厨房になるスタイル

店の特徴は、路地が丸ごとキッチンになっていること。大鍋で煮立つ真っ赤な蟹スープ、山盛りの蟹味噌、揚げ蟹、木耳、薬味が並び、スタッフが慣れた手つきで盛り付けていく。湯気、音、匂い——五感すべてを刺激するこの雑多な空気こそ、“リアルなハイフォン”だ。
細い路地まで広がる「生活の食堂」

路地奥の客室に足を踏み入れると、丸椅子が並び、地元客がぎっしり座って賑やかに麺をすする。バイク、生活用品、赤いランタンが混ざり合うこの迷路のような空間は、まさに“生活の食堂”。どこを切り取ってもハイフォンの地元の温度がそのまま写る。
旨味が立ち上る、濃厚で繊細なスープ

注文したのはバインダークア べべ。べべはベトナム語でシャコの事で、ハイフォン名物の一つだ。バインダークアにシャコがトッピングで入っているのだ。運ばれてきた丼は、黄金色の蟹味噌と卵が溶け込んだスープが印象的だ。レンゲを入れた瞬間、蟹の甘い香りがふわっと広がる。肉厚のシャコがレンゲに入り込んでくる。味わいは濃厚なのに後味が軽く、蟹の旨味を最大限に引き出しながらも重さがない。ネギの香りがスープに立体感を与え、何度も啜りたくなる。
食べ応えがある幅広麺とネギのアクセント

バインダークアの最大の特徴は、ハイフォン特有の幅広米麺「バインダー」。食感がよく弾力があり、蟹スープとの相性は抜群。さらにネギやトッピングのベトナムレモンと唐辛子が食感のアクセントになり、噛むほどに楽しさが増す。丼の底からは色々な大きさや形の蟹肉とシャコがいつまでも現れ、最後まで味の変化が続くのも嬉しい。
価格以上の満足感とローカルならではの魅力

驚くのは、この具材の量と味に対して、価格が非常に良心的であること。価格は7万ドン(約400円)。朝から満席になるのも納得だ。“清潔・快適”を求める人には向かないが、ここには“旨い・早い・活気がある”という、ハイフォン地元の食堂の本質が詰まっている。観光プランではなく、ハイフォンの日常に触れたい人にこそ訪れてほしい。
バインダークアとは?(料理解説)

バインダークア(Bánh đa cua)は、北部ハイフォンを代表する名物で、蟹だしスープに赤褐色の幅広米麺を合わせた料理だ。蟹味噌、ほぐし蟹、木耳、揚げ豆腐、野菜などが入り、海の旨味をしっかりと感じられる。フォーやブンとも違う、唯一無二の個性を持ち、“海の旨味麺”として地元民に愛され続けている。
ハイフォンの「暮らしが見える一杯」
バイクの隙間を縫って店に辿り着き、路地奥の小さい椅子に座り、湯気を浴び、蟹の香りに包まれる。この雑多な環境こそ、ハイフォンの魅力そのものだ。味だけでなく、路地の空気、客の笑い声、店員の手際のよさ——すべてがセットになって、ひとつの“バインダークア体験”になる。
ベトナム第4の都市、ハイフォン市を訪れるなら、ぜひこの一杯を。
旅ではなく、街の“暮らし”に触れられる味がここにある。
Bánh Đa Cua Bể Ngõ 195 Cầu Đất 住所・地図
住所
195 P. Cầu Đất, Lê Lợi, Ngô Quyền, Hải Phòng

