「ガソリンの王者」は、なぜ「電化」を急がないのか — ホンダベトナムが描く、「ベトナム的EV化」という未来
ベトナムで「バイク」と言えば、今でも多くの人がまず思い浮かべるのは Honda だ。
市場には電動バイクメーカーが次々と登場し、EVブームも加速している。しかしその中で、ホンダベトナムは意外なほど慎重だった。
だからこそ、最近のホンダベトナムの動きは非常に興味深い。
ベトナムのメディアによれば、ホンダベトナムは2026年を「電動化加速の年」と位置付け、EVバイクの新モデル投入、バッテリー交換ステーション、充電網、さらには中古再販やバッテリー再利用まで含めた「エコシステム」構築に乗り出している。
だが、ここで重要なのは、ホンダが単純に「VinFast型EV革命」を追いかけているわけではない、という点だ。
ホンダは「EVそのもの」ではなく、「生活インフラ」を作ろうとしている
ホンダベトナムの戦略を見ると、単なる車両販売ではなく、
- バッテリー交換
- 充電網
- 中古車買い取り
- 再整備販売
- バッテリー再利用
- 安全教育
まで含めて設計されている。
これは非常にホンダ的だ。
日本企業はしばしば、「製品」よりも「運用システム」を作ろうとする。
ベトナムの街角で何十年も壊れず走るDreamやWaveは、単なる工業製品ではない。
私の愛車も歴代Waveだが、すこぶる調子がいい。
修理店、部品網、整備文化、中古流通、家族継承まで含めて、ひとつの社会インフラになっていた。
つまりホンダは今、
「ガソリン時代に作った社会インフラ」を、EV時代に再構築しようとしているのである。
VinFastは「スマホ」、ホンダは「冷蔵庫」を作っている
ここがベトナム市場の面白さだ。
VinFast は、EVを「未来のテクノロジー商品」として売っている。
デザイン、アプリ、OTA、サブスク、SNS映え。
充電網の構築がホンダより進んではいるが、非常に“スマホ的”だ。
一方ホンダは違う。
ホンダが売っているのは、「毎日必ず動く安心感」である。
これは冷蔵庫や炊飯器に近い。
ベトナムでは今でも、
「壊れない」
「修理できる」
「中古価格が落ちにくい」
という価値が極めて強い。
だからホンダは、中古再販やバッテリー循環、安全教育まで強調する。
これは単なる環境戦略ではない。
EVでも資産価値が残るという、日本的安心感の輸出なのだ。
ホンダ最大の課題は、「若者が求める未来っぽさ」への対応だ
しかし、ホンダにも大きな課題がある。
それは、「未来っぽさ」だ。
ベトナムの若年層は、もはや「日本品質」だけでは動かない。
スマホ世代のベトナム人にとって、
- AI
- アプリ
- デジタル体験
- デザイン
- SNS映え
- ブランド世界観
は極めて重要になっている。
だからVF3のような小型EVが話題になる。
あれは単なる車ではない。
「未来に参加している感覚」を売っている。
ホンダは逆に、「真面目すぎる」危険がある。
品質は高い。
安全性も高い。
だが、それだけでは若者は熱狂しない。
つまりホンダベトナムは今後、
「日本品質」
と
「未来感」
をどう融合するかが最大のテーマになる。
それでも、最後に強いのは現場を知る企業かもしれない
ただ私は、ホンダベトナムはかなり強いと思っている。
なぜなら、彼らはベトナム人の日常を30年以上見続けてきたからだ。
ベトナムのEV化は、中国のようには進まない。
都市部と地方、富裕層と庶民、急速発展とインフラ不足が混在する。
だから最後に重要になるのは、
「派手な未来」ではなく、
雑に使っても回るシステムなのだ。
ベトナム映画「Truy Tìm Long Diên Hương」に出ているホンダの活躍はそれを象徴するシーンが多い。魅了されるベトナム映画の一つである。Netflixにあるのでぜひ見て欲しい。

日本人の得意技は「雑に使っても壊れないシステム」
これは日本企業が最も得意としてきた分野でもある。
おそらく今後のベトナムでは、
- VinFastが「未来」を作り、
- Hondaが「日常」を作る
という構図になっていく。
そして、その二つが競争することで、ベトナムのモビリティ文化はさらに独自進化していくだろう。
ベトナムは今、
「日本式工業文明」と「中国式デジタル速度」が交差する、世界でも珍しい実験場になりつつある。
やはりベトナムのEV市場からは目が離せない。
参考記事:VTC NEWS

