■ ベトナム、原発へ再び動く ― 止まっていた国家プロジェクトが動いた理由
ベトナムが、再び原子力発電へと動き始めた。
かつて一度、止まったはずの国家プロジェクトが、いま静かに、しかし確実に再起動しようとしている。
■ ベトナムが原発計画再開
しかも今回は、単なる構想ではない。
国家としての意思決定プロセスが、正式に動き出した。
■ 「国家審査評議会」の設置という決定
ベトナム政府は2026年3月27日、
副首相ブイ・タイン・ソンの署名により、「国家審査評議会」の設立を決定した。
対象は、ニントゥアン原発1号機プロジェクト―ニントゥアン省に建設を計画されているベトナム初の原子力発電所である。
ここで重要なのは、これは「建設決定」ではないという点だ。
これはその一歩手前、“国家として、このプロジェクトを正式に審査する段階に入った”
という宣言である。
ニントゥアン省とは?
ニントゥアン原発が建設予定のニントゥアン省(Ninh Thuận)は、ベトナム中南部の海沿いに位置する省です。
- ホーチミン市から北へ約300〜350km
- リゾート地として有名なニャチャン(カインホア省)の少し南
- 海岸に面した乾燥地域
にあります。
■ 全省庁を巻き込んだ「国家プロジェクト」
今回設立された評議会の構成は、極めて重い。
・財務大臣が議長
・複数省庁(工業・建設・国防・公安・科学技術・外交など)が参加
・中央銀行、地方政府も関与
つまりこれは、単なるエネルギー政策ではない。
安全保障、外交、産業、金融――国家のあらゆる機能を横断する意思決定である。
さらに興味深いのは、期限内に意見を出さなければ「同意」とみなすというルールだ。
これはベトナム特有の「スピード優先型ガバナンス」であり、裏を返せば、「もう止めない」という強い意思だろう。
■ EVNに課された役割
このプロジェクトの主体は、国営電力会社 Vietnam Electricity(EVN)だ。
EVNは今回、
・投資方針の修正
・関連資料の提出
・審査への全面対応
を求められている。
つまり、「計画を現実させる責任」を負っている。
■ 4月、国会へ
スケジュールは明確だ。
・財務省が審査を主導
・政府が承認
・2026年4月、国会へ提出
この流れは、単なる検討ではなく「政治決定」へ進むプロセスである。
ベトナムにおいて国会提出とは、実質的に国家としての方向性が固まった段階を意味する。
■ なぜこの一手が重要なのか
ここで、多くの日本人はこう思うだろう。「まだ審査段階なのではないか」と。
しかしベトナムにおいては逆で、審査が始まること自体が、最大の意思表示である。
なぜならこの国では、
・政治
・官僚
・国営企業
が一体となって初めて、プロジェクトが動くからだ。
今回の評議会設置は、それらがすべて揃ったことを意味している。
■ 止まっていた10年が、動き出す
この原発計画は、かつて2016年に凍結されていた。
理由はコストと財政リスク。
だが今、ベトナムは変わった。
・経済規模の拡大
・電力需要の爆発的増加
・再エネの限界露呈
これらが重なり、原発なしでは成長できない段階へと移行している。
■ これは電力だけではなく国家の未来の話でもある
原発とは、単なる発電所ではない。
それは、長期の産業計画を可能にする装置でもある。
安定電力があるからこそ、
・製造業は投資できる
・外資は安心して参入する
・国家は未来を設計できる
つまり原発とは、未来の時間を約束するインフラだ。
■ 日本にとっての意味
かつて日本は、このプロジェクトの主要パートナーだった。
だが凍結により、その関係は一度リセットされた。
そして今、ベトナムの立ち位置は変わっている。
もはや、「支援を受ける国」ではない。
「条件を選ぶ国」となったのだ。
※参考記事: Nguoi Quan Sat

