経済成長より“物語”を売れ──ベトナムで通用するストーリーマーケティングとは

マーケティング

ベトナム人が日本食レストランに求める“物語”

「値段よりも“感じ”が大事なんですよ」

ベトナムで日本食レストランへ営業に行くと、オーナーからよく聞く言葉だ。

仕入れる食材の価格にとても敏感な反面、このような真逆の声も実はよく聞く。

顧客の声をよくひろっているレストランやカフェはやはり人気だ。

SNSで話題になるレストランやカフェの共通点は、メニューでも価格でもなく、“物語”があること。

「鮮魚を空輸で豊洲から直送」 「日本の人気店がベトナムに出店」──そんな背景が共感を生み、人を動かしている。

そして、ベトナムの日本に憧れる若者は、日本の「丁寧さ」「控えめさ」「世界観の完成度」という”生き方の美学”に惹かれているのだ。

私がNewsWeek日本版に書いているコラムも参照して欲しい。
ホーチミン市の若者が憧れる「日本のクールさ」とは何か | ベトナムの日本人

“経済”より“交換”で考える日本ブランド

マルセル・モースは人と人の関係を「交換」で説明する。

また、「贈与には返礼が伴う」と述べた。

つまり人は“もらった物”そのものより、“もらった想い”に価値を感じる。

ベトナムで日本ブランドが成功するのも同じだ。

消費者は“商品”を買っているのではなく、“日本人の誠実さや美意識”という“物語”を受け取っている。

それに対して彼らは、SNSでシェアし、友人に勧めるという“返礼”をする。

モースの「交換」の理論は、現代のストーリーマーケティングそのものなのだ。

ベトナムはモノの時代から、意味の時代へ

ベトナムの経済成長は目覚ましい。

その速さたるは、人々の消費行動はすでに“物質的満足”から“意味的満足”へと移行している。

「高いから良い」ではなく、「そのブランドが何を信じているか」で選ばれる時代。

たとえば、ベトナムの人気カフェ「Katinat」「Cong Ca Phe」も、単なるコーヒー店ではなく、“サイゴンのクラシックを再発見”“ノスタルジーで国をつなぐ”という物語を持っている。

そこに共感が生まれ、ファンがコミュニティ化していく。

日本企業がベトナムで成功する鍵

ベトナムでは「品質で勝負」はもう十分通じる。

これからは「あなたのブランドが、どんな未来を信じているか」を語ることが大切だ。

結びに──ストーリーが経済を超える瞬間

ブランドとは、ロゴでもなく広告でもない。

それは“語り継がれる物語”だ。

そして、物語が人から人へ渡るたびに、見えない「信頼」が積み重なっていく。

経済成長の波に乗るだけでは、共感は生まれない。

「なぜこの商品を作ったのか」「どんな想いで届けたいのか」

その小さな物語こそが、ベトナムで最も強いマーケティング資産になる。

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